フィリピンに滞在していた7年間で一番よく利用していた乗り物はタクシーでした。なんといっても初乗り40ペソ(約83円)という安さなので、どこへ行くにも気軽に利用していました。

料金は安い一方で、時々ぼられたり、少々危ない目に遭うこともありました。昨今タクシーの安全性も年々上がっては来ているもののまだまだ被害に遭ったという話もききます。

フィリピンにいると思いもよらないハプニングに遭遇することは日常茶飯事です。ここではタクシーにまつわるハプニングに絞って、私の体験談をまとめてみました。

フィリピンの暴走タクシー

都市

フィリピンのタクシーの運転手の中には行き先にまっすぐ向かわず、わざと遠回りをしてメーターの料金を上げようとする人がいます。観光客や外国人のように道をよく知らなさそうな人をターゲットにします。

私もフィリピンにきて半年ぐらいたったころそういう運転手にあたってしまいました。ただ回り道をするだけでなく、かなり強引だったのでとても怖かったことを覚えています。

私を乗せたそのタクシーは交差点で信号が青になるのを待っていました。交差点を越えてまっすぐ200メートルぐらい行けば目的地のはずでした。

信号が青になろうするその瞬間、ウィンカーも出さずに急に右折をしてどんどんスピードを上げて目的地とは違う方向に走っていきます

突然のことで驚いた私は「止めて!すぐに止めて!」と叫びました。運転手は「この道で合っている」と言って止めようとしません。

頭にきた私は、走行中のドアを開けて飛び降りようとしました。もちろん本気で飛び降りるつもりはありませんでした。誰か周りの人が異変に気付いてくれたらいいなと思ったのです。

それを見た運転手がやっと「わかった、わかった!!」と言ってUターンしてくれました。その後運転手は「渋滞を避けようと思った」とか「目的地を勘違いしていた」とかいろいろ言い訳をしていました。

私はメーターの料金は無視して、本来かかるはずの金額を払って降りました。タクシーが急にスピードを上げたときにはどこかに連れ去られるのかととても怖かったです。

軽く回り道をされることは何十回とありましたが、予定した飛行機に乗り遅れそうで急いでタクシーを飛ばして空港に行く道中、そのタクシーの運転手が遠回りした時には我を忘れて爆発してしまいました。

大通りをまっすぐ行けばいいはずのところを、渋滞を避けると言って民家が立ち並ぶ住宅地の入りくねった細い道に入り、ぐるぐる同じところを何度も回っているのです。

何度も元の道に戻るように言いましたが、全然言うことを聞いてくれないのでとうとう運転手席を後ろから思い切り蹴とばしました

それでやっと私が本気で怒っていることが通じたのか元の道に戻りました。何とか無事に着いて飛行機に間に合いました。

しかし、今思えば絶対してはいけないことをしてしまいました。相手が逆上しなかったから良かったもののケンカになっていたら刺されたり、撃たれたりしたかもしれません。

フィリピンでは車のアタッシュケースに護身用にと銃を入れている人が結構います。それからはなるべく感情的にならないように気を付けていました。

親切なタクシー

フィリピンのタクシーの運転手は悪い人ばかりではありません。親切で優しい運転手さんもいます。

その日乗ったタクシーの運転手さんは私がフィリピンにきてまだ間もないことを知ると、車を走らせながらいろいろフィリピンのことを教えてくれました

車で通るときに見えた銅像や建物の話、通りの屋台の話、おすすめのお店などたくさん話してくれました。

運転手さんは車を止めると、「ちょっと待っててね。」と車を降り近くのお店に入っていきました。すぐに手に袋を持って出てきました。車に戻ると「これフィリピンの伝統的なお菓子だよ」と言って私にくれました。

私がまだ食べたことがないだろうと思ってわざわざ買ってきてくれたのです。名前は忘れてしまいましたが、ココナッツミルクの匂いが香る薄焼きクッキーみたいなものでした。

こんな運転手さんに出会うと嫌なことも吹っ飛んでしまいます。降りるときに運転手さんが「今度会ったらまたおいしいもの紹介するね。」と言ってくれました。

その後この運転手さんに会うことはありませんでしたが、今でも心が温かくなった思い出として私の胸に残っています。

ナンパタクシー

愛情

日本人はフィリピン人にモテます。彼らにとって色が白くて、目が細いことは魅力的なのだそうです。それに日本人はお金持ちだと思われているため、純粋な意味でモテる場合とお金目当てでモテる場合があります。

その日私が乗ったタクシーの運転手がどちらのタイプだったかわかりませんが、タクシーでナンパされるという珍しいことがありました。

その運転手さんと会話をしているうちに、「これからどこ行くの?」「何時に終わる?」という話になってきました。「あれ、会話の雲行きが怪しい」と感じましたが、適当に答えていました。

私は仕事場に行く途中でした。「仕事が終わるまで待っているよ。帰りも送っていく。」「帰り一緒にご飯を食べよう」と話がだんだんエスカレートしていきます

今日は忙しいから無理と答えると「これから毎日送り迎えしていい?」「行きたいところは僕が連れて行くから」となかなか強引です。

無理だ無理だと言っているうちに目的地に着いたので料金を払って降りようとしましたが、料金を受け取ってくれません。「いや、それはこっちが困るから」としばらく押し問答。

私は絶対借りを作りたくなかったので半ば強引に渡すと電話番号を渡されましたが、無事に降りることができました。その後もちろんその運転手さんに会うこともなく、思い出すとなんだかおもしろい経験でした。

危ないタクシー

銃

幸い私はフィリピンのタクシーで命に関わるような危ない目に遭ったことはありません。身近な人でタクシー強盗にあった人が2人います

一時期、タクシー強盗が多発していた時がありました。タクシーに乗って信号待ちをしていると、急にドアが開けられ2、3人知らない人が乗り込んできて、乗客にナイフや銃を突き付けます。タクシーの運転手とグルなのです。

金品を奪い取って乗客を降ろし、走り去っていくというパターンです。タクシーだけではなくて、普通の乗用車にも突然乗り込んできて強盗を働くこともありました。

それまでは車の内側ロックをあまり気にしていませんでしたが、あまりにも頻繁にこういう事件がつづいたので、知り合いの日本人はみんなロックに神経質になっていました。

危ない目に遭った話ではないのですが、タクシーに関する恐い出来事がありました。

いつも通り車が渋滞にハマっていた時のことです。いつもよりずいぶん車の動きが遅いようなので事故でもあったのかなと思っていました。どうやら警察が1台1台車を止めて運転手に検問しているようです。

警察が私の車の2台先にいるタクシーのところまで来ました。長々とタクシー運転手と話しています。しばらくするとタクシー運転手が車から降りました。警察にトランクを開けるように言われたようです。

運転手は渋々トランクを開けました。中に入っていたものはなんと人の死体でした。私の位置からも足を曲げられて押し込まれている男の人の死体が見えました。物凄くショックでした。

推測ですが、タクシー運転手が殺害して死体を隠そうとしたのでしょう。警察が通報を受けて犯人を捕まえたのだと思います。自分に直接関わる話じゃありませんが、とても恐ろしい出来事でした。

諭すタクシー

渋滞

ある日仕事帰りにタクシーを捕まえると、タクシーの運転手さんがメーターのボタンを押す前に「ちゃんとメーター使ってね。」と私は言いました。

運転手さんは「なんでわざわざそんなこと言うの?言われなくてもメーターを使うよ。」と言いました。私は「ぼったくられたり、怖い思いをするのが嫌だから、最初に言ったんだよ。」と答えました。

すると運転手さんは「タクシーの運転手は悪いとか危ないとか言われるけど、タクシーの運転手の方がよっぽど危なくて、怖い目に遭ってるんだよ。夜中に走っていると強盗に遭うこともあるし、知らずに薬物中毒者を乗せて車内で刃物振り回してわめきだしたり、この前なんか初老のおばさんにラブホテルに送らされて一緒に降ろされそうになったことだってある。大変なんだよ。」と語ってくれました。

確かに彼の言う通りです。タクシーの運転手さんはある意味命がけで働いているのだとわかりました。

そしてその運転手さんは「悪いタクシーもいるけどいいタクシー運転手だっていっぱいいるんだから、タクシーの運転手みんなが危険だとは思わないでほしい」と言われました。「そうだね。これからも体に気をつけて頑張ってね。」と車を降りました。

タクシーの運転手も危ない目に遭っていると諭されて、いろいろ考えさせられました。

まとめ

フィリピンに7年もいるといろんなタクシーの運転手さんに出会います。ぼったくられたり、遠回りをされたり嫌な目に遭うとタクシーに対する見方がネガティブになってしまい乗るのが億劫になります。

そんな時出会ったのが、運転手も大変だと話してくれたタクシーの運転手さんです。

思い返せば嫌な目に遭ったのはほんの10パーセントくらいのことです。大半の運転手さんはいい人でした。

タクシーで起こったハプニングを通して、フィリピン人とどういう風に付き合っていけばいいのか少し学んだような気がします。フィリピンでタクシーに乗る際は、警戒も大切ですが、日本にはあまりない雰囲気を楽しんでください。